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【地球を旅したくなる本】『旅のラゴス』感想

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旅に出たいという気持ちは、ほとんどの人が持っている欲求の一つだと思う。

誰も自分を知らない土地に向かい、そこで出会った人たちと交流を深める。その土地の文化に触れて、また知らない文化を求める旅に出る。

 

新潟という田舎に生まれ育った僕は、未だこの土地を離れたことはありません。だからこそ自分の知らない土地に足を運び、様々な経験をしたいと思う欲が湧いてくることはしょっちゅうあります。

 

今日はそんな旅に出たい気持ちを沸き立たせてくれる本『旅のラゴス』を読みました。

 

 

内容紹介

北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

 

著者について

筒井/康隆
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。’60年、弟3人とSF同人誌“NULL”を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が“宝石”に転載される。’65年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。’81年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、’87年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、’89(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、’92年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。’96年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。

  

初めてのSF小説

SFと呼ばれるジャンルの本を読んだのはこれが初めてかもしれません。

この本は主人公のラゴスの一生をかけた旅物語です。

 

時代設定は未来の地球。人類は進化を遂げて、超能力を身に付けるようになりました。移動するときに集団でワープをしたり、壁をすり抜ける能力、動物と気持ちを同化する能力、相手の言ったことをコピーし、内容も相手の声もそのまま再生する能力など。そういった超能力を身につけることが(電源をつけると明かりがつくように)生活レベルで一般的になりました。

 

身体的に進化した分、一方で衰退した文化もあったようです。

 

カカラニがとってきてくれた実を見て、おれはそれが農業専門書の写真に載っていて、日記に記されているコーヒーの実であることを知った。移住者は森でコーヒーを栽培していたのだ。条件がよく、森いっぱいに繁殖したのであろう。コーヒーを飲む習慣は移住者が北方へ移動してのち失われたものらしい。専門書に書かれていた加工法の過程をできるだけ忠実に行い、おれは二千年ぶりにコーヒーという飲み物を味わう最初の人間となった。

 

波乱万丈過ぎるラゴスの人生

このラゴスは旅人であり学者でもあります。

旅を続けるうちに様々な経験を学び、また同じように苦難にも遭遇することになります。途中、奴隷として捕まってしまうなど、波乱万丈過ぎる人生を送るラゴス。

ギャルゲー並みにモテるラゴスに言い寄る女性も多く、旅の途中で結婚をすることにもなります。

 

「予知夢は、この場面だったのよ」馬の手綱をひいて砂丘を越えている時、ラウラはそう言った。「七年後の、あなたとわたしの姿だったのよ。わたしがあなたに話さなかったのは、あきらかにわたしたちが少くともとも七年分以上は歳をとっているように見えたことだった」彼女は溜息をついた。「現実のあなたを初めて見た時わたしは、あ、自分の夫になる人はこの人なんだ、って思ったわ。でも、こんな形で結ばれることになるなんて思わなかった」

 

(予知夢を見る能力の持ち主である女性と結婚するも、後ほど別れることに。それもまた女性は予知していたという悲しい結末も...)

 

本のイメージとしてはスターウォーズです(僕の中では)。スターウォーズのように軍同士の戦争は起こりませんが、超能力を持った部族がいたり、カタカナの登場人物が多かった点がイメージと被りました。

 

ずばり見どころは

本作の見どころは、なんといってもラゴスの生き様です。

青年時代から一貫して芯のある男という印象がありましたが、それと同時に流れに身をまかせる潔さを彼には感じました。旅の途中、奴隷として二度捕まってしまう彼。学問の研究でまとめていたレポート(十五年分)を、盗賊に奪われ破棄されたとき。普通の人であれば、発狂せずにはいられないところ、彼はこう悟りました。

 

しかし、さすがに十五年間の読書生活はそれなりの強靭さをわたしに齎していた。それは他ならぬその十五年間の読書生活が、たった羊皮紙二百枚に集約され、それが失われたならすべて無に帰すようなものでしかなかったのかという反省から始まった。だとすれば、いったい何のための十五年だったのだ。その十五年のうちにお前は、人間の生み出した知の遺産が、十五年どころか、ひとりの人間が一生かかろうが、二生、三生かかろうが学びきれぬほどの膨大なものであることを身にしみて悟ったのではなかったのか。なのに、今のその、うつけた様子は何事だ。あの無知なウラムジ莫迦と言われてもしかたがない様子だぞ。

 

時代設定は現代とまったく異なるものの、彼のような芯の強さに憧れる部分はいくつもありました。

 

まとめ

SFの個性豊かな登場人物が魅力的でした。それに加えてラゴスの人生観。

ネットのレビューも高く、文庫小説ながらも読み応えのある一冊でした。

旅をしている人、これから旅に出たいと思う人におすすめの本です。

 

それではまた!