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【第153回芥川賞受賞作!お笑いの"リアル"を描いた小説】『火花』感想

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つい先日、第156回芥川賞山下澄人さんの『しんせかい』が選ばれました。書店を探して読もうと思ったのですが見つからず。ふいと他の作品に目をやってみると、「第153回芥川賞」のキャッチコピーが目に入りました。

 

お笑い芸人にスポットを当てた、ピース又吉先生の話題作『火花』。読もう読もうと思って、やっと今日読了です。

 

 

 

 

内容紹介

お笑い芸人二人。奇想の天才である一方で人間味溢れる神谷、彼を師と慕う後輩徳永。笑いの真髄について議論しながら、それぞれの道を歩んでいる。神谷は徳永に「俺の伝記を書け」と命令した。彼らの人生はどう変転していくのか。人間存在の根本を見つめた真摯な筆致が感動を呼ぶ!「文學界」を史上初の大増刷に導いた話題作。

 

お笑い芸人の現実

売れないお笑い芸人の徳永と、他の芸人とは違う異質の存在である神谷。

神谷のその異質さに徳永は「師匠になってください」とお願いし、彼と一緒に行動することになります。

 

お笑い芸人である又吉さんが描く物語。主人公たちはテレビでよく見かける「お笑い芸人」という職業にスポットを当てた今作。フィクションでありながら、又吉さんが見て来たお笑いの世界の「リアル」が描かれていると感じました。

 

周囲の評価をどう捉えるか

「お前は、あんな意見気になるか?」

「僕はアンケートに書かれてる意見とか割と気にします」

「劇場に来てるお客さんの意見はな、ネットとかは?」

「なります」

面白いことをやりたくて、この世界に入ったのだから、面白くないと言われることは自分の存在意義に関わることだった。

「周りの評価気にしても疲れるだけやん。極論、そこに書かれてることで、お前の作るもんって変わるの?」

「一切、変わりません」

「せやんな。俺等、そんな器用ちゃうもんな。好きなことやって、面白かったら飯食えて、面白くなかったら淘汰される。それだけのことやろ?」

 

本質を突く言葉たち。

これらは又吉さんが感じてきた、お笑いの世界で生きてきた彼だからこそ書ける文章だと思います。

 

人は周りからの評価は誰だって気にしてしまうもの。お笑い芸人やメディアに出演する人は誰だってそう。社会に出て働くサラリーマンだって、周りにどう見られているか、常に意識して生きている。

 

しかし周りの人たちのために生きている人生では決してない。

自分の人生を生きるということは、自分なりに自分らしく、精一杯生きることが重要なのだ。

お笑い芸人という道に骨を埋める覚悟がある人たちにとって、「笑いを極める」というのは、つまりはそういうことなのだ。

 

神谷という存在

神谷さんは、信念を持っていた。周囲に媚びることが出来ない性質は敵も作りやすい。それでも神谷さんは戦う姿勢を崩さなかった。舞台に誰がいても、観客が一人も求めていない状況でも神谷さんは構わずに、自分の話をした。一部の芸人には賞賛されたし、一部の芸人からは煙たがられた。僕は神谷さんになりたかったのかもしれない。だが、僕の資質では到底神谷さんにはなれなかった。

 

神谷という人物は現実世界にだって必ずいる。自分を曲げることが出来ずに周囲の人間と対立する人を僕は何人か見て来た。どの人も異質だった。異質だったけど、その中に「芯」みたいなものを感じていた。

 

「芯」を持つ人に対して、不思議と尊敬の念を持ってしまう。周りからは「あいつは馬鹿だ」とか「近づかないほうがいい」と言われても、自分を曲げないあの姿に、どこかかっこよさを感じてしまってならない。

 

きっと徳永も神谷に対してそんな思いを持っていたにちがいない。

誰にも媚を売らず自分のスタイルを貫くこと。誰にだってできることではないけれど、やってのける人は、多くはないけれど存在する。

 

ひとつのことに命を賭けるということ

必要がないことを長い時間をかけてやり続けることは怖いだろう? 一度しかない人生において、結果が全く出ないかもしれないことに挑戦するのは怖いだろう。無駄なことを排除するということは、危険を回避するということだ。臆病でも、勘違いでも、救いようのない馬鹿でもいい、リスクだらけの舞台に立ち、常識を覆すことに全力で挑める者だけが漫才師になれるのだ。それがわかっただけでもよかった。この長い月日をかけた無謀な挑戦によって、僕は自分の人生を得たのだと思う。

 

過酷な世界で生きた二人。

お笑いという形のないものを提供し続けることは、本当に過酷で残酷な道だと思う。

自分で自分のことを価値ある人間だと思わないと、生きてはいけない世界だから。

 

様々なことに葛藤しながらも芸人としての道を歩んだ徳永。

自分の考えを曲げずに周囲と対立しながら自らの道を歩んだ神谷。

 

何を信じていいか分からなくなったとき、人はどう生きていくのか。芸人として生きて来た又吉さんでしか描けない世界観があったと思います。

 

まとめ

ラストは衝撃的な終わり方で、賛否両論が分かれると思います。感動、からの不気味さが襲い、人の「狂気」すら感じるかもしれません。

 

人生、一点に集中し脇目もふらず努力を惜しまない。ハイリスク・ローリターンで終わってしまうかもしれない。才能のなさに打ちひしがれてしまうかもしれない。それでも人生を賭けて何かに打ち込む素晴らしさと残酷さを『火花』を通して感じることが出来ました。

 

それではまた!

 

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