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【これは...四月は君の...おっと誰か来たようだ】『君の膵臓をたべたい』感想 ※ネタバレあり

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どーも、走るとり(@hashirutori00)です。

書店で見かけた瞬間、誰しもが気になってしまうタイトルの本を読みました。『君の膵臓をたべたい』

残念ながらみなさまが期待しているようなカニバリズム(人間が人間を食べる)を描いた作品では全くございません。グロなし、エロなし(ちょっとあるけど)、あくまで青春文学。安心してお読み下さい。ではレビュー!

 

内容紹介

ある日、高校生の僕は病院で1冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。それは、クラスメイトである山内桜良が密かに綴っていた日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていた。こうして、偶然にも【ただのクラスメイト】から【秘密を知るクラスメイト】となった僕。まるで自分とは正反対の彼女に、僕は徐々にひかれていった。だが、世界は病を患った彼女にさえ、平等に残酷な現実をつきつける――。全ての予想を裏切る結末まで、一気読み必至!

 

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ボーイミーツガールの青春物語。膵臓の病気を患った山本桜良が【ただのクラスメイト】と出会い、「共病文庫」を手にしたことから物語は始まります。設定がどーにも、前に話題になり実写化された大人気コミックに似てるようで。ずっとそれが頭から離れなかったです。

 

著者について

高校時代より執筆活動を開始。『君の膵臓をたべたい』がデビュー作。

 

設定ついて

いきなり辛口コメント、というよりはどうしても伝えておきたい点がひとつ。

過去見たことのある作品がずっと頭から離れませんでした。

 

・主人公、ヒロイン共に学生である。

・主人公は根暗でシンジくんタイプ。

・ヒロインは病気を患っているが、明るく振る舞う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主人公が根暗...

 

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ヒロインが病気...

 

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まんま、四月は君のウッ....!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んなわけはないのですが、知っている人なら知っている作品ですし、設定がもろ被っているので脳内ではそのキャラクター達が動き回りました。

 

やっぱり最近流行りなんですかねー、女子がパワフルで男子が草食系な設定というのは。バズってる『逃げ恥』の主人公たちも同じ設定。

 

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以下、本の感想に移ります。

 

今日という日をどう過ごすか

「んー、言いたいことは分かんなくもないけどさ。例えば、【秘密を知ってるクラスメイト】くんにも、死ぬまでにやりたいことはあるでしょう?」

「………なくはない、かな」

「でも今、それはやってないじゃん。私も君も、もしかしたら明日死ぬかもしれないのにさ。そういう意味では私も君も変わんないよ。きっと。一日の価値は全部一緒なんだから、何をしたかの差なんかで私の今日の価値は変わらない。私は今日、楽しかったよ」

「………なるほどね」

 

人は、いつ死ぬか分からない。余命一年と伝えられた人であっても、一年まるまる生きられる保証なんてない。逆に健康体の人であっても、明日交通事故で死ぬかもしれない。

死はいつ、どこで、やってくるか分からない。だからこそ一日を大切に生きていかなければいけない...なんてのは頭で分かっていることでしょう。

 

アップルの創設者であるスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業祝賀スピーチで述べた有名な言葉で「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことを私は本当にやりたいだろうか?」とあります。

皆、一日を大切に生きなければいけないと頭では分かっているのです。

本当に明日、死ぬと分かっていたら何をしたらいいのか。

『君の膵臓をたべたい』を読むとそのことについて考えさせられます。

 

冷めた考え

僕は、心底呆れる。どうして彼らは多数派の考えが正しいと信じているのだろうか。きっと彼らは、三十人も集まれば人も平気で殺してしまうのではないか。自分に正当性があると信じてさえいれば、どんなことでもしてしまうのではないか。それが人間性でなく、機械的なシステムであることにも気づかずに。

 

主人公は小学生から友達も作らず孤独な学生生活を過ごしてきました。グループの中で過ごすと見えないのですが、主人公みたいに枠の外から物事を見ることができると、↑のような印象を周りの人に持ってしまいます。

学生ならではの空気感。僕はもう学生ではないのですが、こんなことあったよなぁと思い出しながら読み進めました。 

 

そんな主人公も桜良との出会いをきっかけに変わっていきます。

 

強い日差しの中、様々な人が行き交っている。スーツ姿の男性は、随分と暑そうだ。なぜスーツを脱がないのだろう。タンクトップを着た若い女性は足取り軽やかに駅の方に向かっている。楽しい予定があるのだろう。高校生くらいの男女二人組は手をつなぎ合っている。カップルというやつだ。子どもを乳母車に乗せたお母さんは……。

考えていて僕は、はっとした。

窓の外を歩いている彼らは、きっと生涯僕とは関係を持たないであろう、まごうことなき、他人だ。

他人なのに、僕はどうして彼らについて考えていた。こんなことは以前ならなかったことだ。

ずっと、周りの誰にも興味を持たないと思っていたのに。いや、違う。興味を持たないでおこうと思っていたのに。その、僕が。

思わず、僕は一人で笑ってしまった。そうか僕は、こんなにも変わっていたのか。

 

一生関わらない人たちのことをなぜ気になってしまうのか。それは人と関わりを持たない人にとっては分からないことです。主人公は桜良と関わりを持つことで周りの関係を気づくようになります。

 

「怖い」の意味

君は、私を君の中の誰かにするのが怖かったんじゃない?

言ってたよね、君は名前を呼ばれた時に、周りの人間が自分のことをどう思ってるか想像するのが趣味だって。想像して、でも、正しくても間違ってても、どうでもいいって。

私の人生は、周りにいつも誰かがいてくれることが前提だった。

ある時、気づいたの。

私の魅力は、私の周りにいる誰かがいないと成立しないって。

それも悪いことだとは思ってない。だって、皆そうでしょ?人との関わりが人を作るんだもん。うちのクラスメイト達だって、友達や恋人と一緒にいないと自分を保てないはずだよ。

誰かと比べられて、自分を比べて、初めて自分を見つけられる。

それが、「私にとっての生きること」。

だけど君は、君だけは、いつも自分自身だった。

君は人との関わりじゃなくて、自分を見つめて魅力を作り出してた。

だからあの日、君が帰ったあと、私は泣いたの。

君が本気で私を心配してくれた日。君が私に生きててほしいって言ってくれた日。友達とか恋人とか、そういう関わりを必要としない君が、選んでくれたんだもん。

誰か、じゃなく。私を選んでくれたんだもん。

初めて、私は、私自身として、必要とされてるって知ったの。

初めて私は、自分が、たった一人の私であるって思えたの。

ありがとう。

 

承認欲求を満たすために他者と生きてきた桜良と

他人との関わりを絶って一人で生きてきた主人公。

 

全く真逆の方向性で生きてきた彼らが、互いの「ないもの」に憧れていく様は非常に面白かったです。僕も主人公と同じで、グループでわいわい過ごすよりは、一人で本を読んだり、映画を観てたいタイプ。でも時に、常に大勢の友達と過ごす人たちに憧れを抱いたりもします。

 

僕たちは自分の「ないもの」を探して生きているのかもしれません。

 

「さて、じゃあ桜良の家に行くか!」

「そうだね、桜良が待ってる」

僕らはうわははっと笑いながら、長い階段を下りた。

もう、怖いと思わなかった。

 

名前を呼ぶこと(=自分の中で大切な何者にすること)を恐れなくなった主人公は、きっと彼女の死を通じて成長したのでしょう。

 

まとめ

予定調和を220ページでガッツリひっくり返された感じです。ところどころで、「この展開でくるか!」と驚かされる部分はいくつかありました。が、号泣するには至りませんでした。

 

帯文より抜粋

・ラスト40ページは涙涙涙。でも読後の爽快感は格別です(30代 男性)

・最後の展開も予想外で…これがデビュー作なんて信じられない(20代 女性)

・3回読みました。50過ぎのおっさんをその度に泣かせる青春小説がかつてあっただろうか(50代 男性)

・切なくって切なくって……とびきりのラストシーンとたくさんの胸キュンを、ありがとう(30代 女性)

 

50代のおっさんはこの小説では泣かない(笑)10代〜20代には受けるかなと思いますが。

 

でもたぶん、僕も『四月は...』とか全然知らなかったら泣いてたかもしれません。設定や書き方もなんとなくライトノベル感が出ていたので、そこまで感情移入できなかったのが正直な感想です。

しかしこれが著者のデビュー作と考えるとすごいなと思いますし、映画化も決まっているそうなので、評判はよかったのでしょう。

今後の作者の作品にも期待です。

 

それではまた!